セッション?、(1月4日13:00−15:00)
終末期患者の予後の判定
予後評価に必要な情報
日野原 緩和ケアユニットあるいはホスピスで患者さんのケアをする場合、いちばん最後がいちばん大切なのです。どの時期に患者さんが天に召されるかを医学的に推測するわけですが、これは診断よりも難しい。上手に最後を看取るということは、看護や医学のエッセンスだと思います。もう死んでもいいという満足感をもってもらえるかどうかです。そういうようにするためには家族がタイミングよくそこに集まらなくてはならない、キーパーソンがそこにいなくてはならない、その人がいないでは死ねないという気持ちのうちに意識がなくなるのは残念なことです。ナースはしょっちゅう見ているのですから、ナースがその気配をバイタルサインから科学的に察知しながら、適切に判定できるようにしておく必要があります。どのバイタルサインを重要視するのか、血圧なのか呼吸なのか意識なのか、また視線が合わなくなります、汗のかき方、ショック、大出血の場合など私たちはどの程度のバイタルサインを拒むかという訓練がなくてはならないのです。私は英国のホスピスではナースがどういうようにやっているかを知りたいし、みなさんにも参考になると思ってこういう時間をもちました。このあとみなさんの経験から意見をいただきたいと思います。
Andrew なぜ私たちは死ぬのでしょうか、何が原因で私たちは死ぬのでしょうか。
−私はチャプレンですので、罪の価は死なり。死の原因は人間の罪です。
Andrew わたしはチャプレンではないのですが、いい人ほど早死にすると言いませんか。もう少し実際的な話に移って、物理的に肉体的に、固形癌の患者さんが死ぬ原因は何でしょう。
−いろいろな原因があると思うのですが、たとえば肺に広範囲な転移があって低酸素血症によって死を迎えられたり、悪液質による栄養障害で死を迎えたり、もしくは肝臓に広範に転移があったり…。
Andrew 最もよくあるのは感染症です。固形癌の患者の50%が感染症が直接の死因となるのです。これはかなりのサンプル数の剖検の結果をまとめたものです。器官不全は脳、肺、肝それから腎不全などが考えられます。また血管に十分に酸素がいかないということによって生ずる梗塞等も考えられます。それからちょっと意外なのですが固形癌の場合、出血が直接の死因になるというのは結構少ないのです。悪液質、食欲不振、るいそうといったものを全部まとめてCarcinomatosisと呼んでいますが、それも10%くらいの死因となっています。
ドクター、ナースとして予後の評価を行うのにはどういう情報が必要でしょうか。まず癌に限って考えてみましょう。どういう情報がほしいですか。
栄養関係のインデックスが必要だということですね。どれくらい摂取をしているか、また体重の増減などが必要でしょう。
癌自体の情報はどうでしょうが。ステージングの情報が必要ということですね。癌のステージングの情報というのは予後の判定という観点からはどのくらい信頼性があるものでしょうか。
どの部位の腫瘍かということにもよるのではないかと思います。
たとえば睾丸のテラトーマ、ステージ4,BかCの場合ですけれども、これは特に生存するか死亡するかという点で見ると、予後が非常に悪いというわけではありません。子宮頸部の癌の場合はどうでしょうか。この場合には癌の病理的段階はかなり重要になってきます。たとえばステージの1であれば5年生存率が80〜90%、ステージ2のAおよびBの場合はそれぞれ60%と40%、そしてステージ3,4と進んでいくに従って5年生存率が下がっていきます。
それからまた癌の部位によってはステージングが容易でないこともあります。たとえば肺癌はどうでしょうか、どれくらいの疾患なのかという大きさ(ディジーズボリューム)を見るということが大事ですね。
−もうひとつは他臓器への転移です。
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